ハイエース200系は2004年にデビューし、現在(2021年)に至るまで、16年以上もの間、衰えない人気でワンボックス車の先頭を走り続けてきたロングセラーモデルです。
その200系の中でも、特に高い人気を誇るのがハイエース“バン”200系なのです。
今回はハイエース“バン”200系について、その歴史を振り返りながら“網羅的に”解説していきます。
※200系とは通称であり、車の型式(THR200等)の数字部分を表しています。フルモデルチェンジ(全面改良)等により車の型式が変わると、変更後の型式数字部分が通称となります。2004年以前は100系と呼ばれます。
ハイエース200系とは
■ 概要
トヨタ自動車が製造・販売する乗用・商用のワンボックス車。
機能性・デザイン性・安全性・カスタム性の高さから、工事現場やホテルなどの仕事用としてはもちろん、レジャー(釣り、マリンスポーツ、スキー、キャンプ、車中泊)などの趣味用やファミリー用としても人気があり、多様性の高い車といえます。
日本のみならず、世界各国で絶大な人気を誇り、幅広いユーザーの愛車として活躍しています。
■ フルモデルチェンジによる変遷
1967年よりトヨタが製造を開始したハイエース。その長い歴史の中で、5代目を担っているのが“ハイエース200系”です。
こちらが初代ハイエースからの流れです。
- 初代ハイエース(10系) 【1967年~1977年】
- 2代目ハイエース(20系 30系 40系) 【1977年~1982年】
- 3代目ハイエース(50系) 【1982年~1989年】
- 4代目ハイエース(100系) 【1989年~2004年】
- 5代目ハイエース(200系) 【2004年~現在】
こうして見てみると、各モデルの活躍期間が長いことからも、ハイエースという車の完成度の高さ、人気の高さが伺えます。半世紀以上の時の中で、時代のニーズに合わせて進化し続け、洗練された車が“5代目ハイエース200系”なのです。
ハイエース200系の特徴
■ 機能性
1.様々なニーズに応える多様性
ハイエースの大きな魅力の一つに、まず挙げられるのが多様性の高さです。
200系においてもユーザーの用途に応じて様々なバリエーションが用意されているので、自分好みの1台を選択することが可能となっています。
しかし、ボディタイプ・サイズ・エンジン・駆動方式など選択肢がかなり多いため、購入時には苦労するかもしれません。
この点については後述いたします。
2.抜群の室内スペース
ハイエースといえば、なんといっても圧倒的な室内空間の広さが魅力です。“キャブオーバータイプ”という運転席下にエンジンを搭載したタイプで、エンジンルーム(ボンネット)の部分を不要とすることで、室内空間を最大限まで広くしています。
標準ボディタイプで、荷室長さ: 3000mm 幅: 1520mm 高さ: 1320mm。
どんなシチュエーションにも対応できそうです。
3.パワフルかつ環境にやさしい走行性能
最新200系に搭載されている1GDエンジン(2.8ℓディーゼルターボ)と6速A/T(変速装置)の組み合わせと、DPRシステム(排気ガス浄化装置)により、ディーゼルエンジン本来の力強さを持ちながら、ハイエース史上最高の燃費性能(カタログ値 13.0km/L)と環境性能を実現しています。
かつてのディーゼルエンジンのイメージとはかけ離れたクリーンな排気ガスは、外観からはガソリンエンジンと区別がつかないほどです。
4.世界で実証済みの耐久性
「ハイエースは丈夫で長持ちする」というイメージを持たれている方も多いと思います。
もちろんメンテナンスの状態に大きく左右されますが、実際に日本において50万km以上走行している現役のハイエースは数多く存在します。
代替え周期の早い日本と比べて、海外においては、タクシーとしての利用が多いということもあり、なんと100万km以上走っているハイエースも存在します。
耐久性という視点から見ても抜群のパフォーマンスを発揮しています。
■ デザイン性
外装、内装ともに、機能美を追求し、細部までこだわったデザインはモダンで力強いイメージを与えてくれます。
商用車とは思えないほどスタイリッシュなハイエースが200系です。
■ 安全性
200系の安全性における最大の特徴は2017年11月のマイナーチェンジ(一部改良)で先進安全技術である衝突回避支援パッケージTSS―P(トヨタセーフティーセンスー上位グレード)が標準装備となったことでしょう。
TSS-Pには、ブレーキアシストによる衝突危険回避サポート(プリクラッシュセーフティーシステム)や車線逸脱の危険を知らせるレーンディパーチャーアラート、夜間の視認性を向上させるオートマチックハイビーム、信号待ちや渋滞で先行車の発進を知らせる先行車発進告知機能などの機能があります。
エアバッグなど従来の安全装置に加え、TSS-P搭載という万全を期した高い安全性を備えています。
■ カスタマイズ性
ハイエース200系は専用のカスタムパーツのラインナップが豊富なため、ニーズに合わせて自由度の高いカスタムが可能です。
例えば、デザインにこだわるならエクステリア(外装パーツ)やエアロパーツ、乗り心地や走りにこだわるならサスペンションなどの足回りパーツ、キャンプや車中泊での使用にはベッドキット・・・といった具合に多種多様のカスタムを楽しむことができます。
■ リセールバリュー(再販価格)の高さ
リセールバリューとは、一度購入したものを再度販売する際の価格のことです。中古価格のことですね。
ハイエースは世界中の中古車市場で人気が高く、リセールバリューが高いのが特徴です。他社メーカーの同様のバンである日産ホーミーやマツダボンゴなどに比べても中古価格が非常に高くなっていることが特徴と言えます。
バンを購入する際には「ハイエース」一択と言えます。
ハイエース200系の種類
ハイエース200系にはハイエースバン以外にも全部で3種類のモデルが存在します。
- ハイエースバン
- ハイエースワゴン
- ハイエースコミューター
■ ハイエースワゴン
乗車定員10名の3ナンバー(普通乗用自動車)登録のモデルです。
乗車人数が多いならワゴンを選択するとよいでしょう。
■ ハイエースバン
ハイエースバンの乗車定員2~9名です。ボディサイズによって1ナンバー(普通貨物自動車)と4ナンバー(小型貨物自動車)登録があります。
ワゴンに比べ、荷物がたくさん積めるのが特徴です。
■ ハイエースコミューター
乗車定員14名の2ナンバー(普通乗合自動車)登録のマイクロバスです。普通免許では運転できず中型免許が必要となります。
主に事業者向けに使用されることが多いハイエースです。送迎バスや介護施設や幼稚園などでも利用されているのをよく見かけます。
以上3種類の中から特に人気の高い、“ハイエースバン”について詳しく解説していきます。
ハイエースバン200系の魅力
ハイエースといえば、ハイエースバンがスタンダードといっても過言ではありません。
その主な理由について、解説していきます。
■ ニーズに合わせた乗車定員の選択
ハイエースバンは乗車席を重視したワゴンに比べ、グレードによって乗車定員の幅が2~9名と広く選択でき、荷室空間を重視した設計になっています。
様々なニーズに応じて選択肢が豊富な使い勝手の良い車です。
■ ディーゼルエンジンの選択が可能
ハイエースバンでは、ワゴンにはないディーゼルエンジンの選択が可能となっています。
1GD(2.8Lディーゼルターボ)エンジンと6速A/T(変速装置)の組み合わせにより次のような利点があります。
- 燃費が良い(燃料費が安い)
- クリーンな排気性能
- パワフルな走行性能
- 耐久性に優れている
たくさんの荷物を積んでいるような積載量の多い時でも、力強い走りをしてくれます。
しかし、静粛性に関してはガソリンエンジンに劣るなど欠点もあるので、使用状況に応じた慎重な検討が必要です。
■ 荷室のカスタマイズ性に優れている
広い荷室空間に応じて、専用のカスタムパーツも数多く販売されており、ワゴンに比べ、荷室のカスタム性に優れています。
■ 維持費が安い
1ナンバー・4ナンバー登録なので1年に1度車検が必要になりますが、自動車税や自動車重量税等の税金が安くなるため、トータルして維持費が安くなります。
■ 海外の中古車市場で需要がある
前述したように、ハイエースバンは海外の中古車市場においても需要が高いため、リセールバリューも高くなります。ハイエースワゴンよりもハイエースバンとハイエースコミューターの海外での需要が高いです。
ハイエースバン200系の特徴
ハイエースバンには、数多くのバリエーションが存在します。
その内容を6つの項目(グレード・ボディサイズ・エンジン・駆動方式・ドア数・乗車定員)に分類してまとめたので一つずつ見てみましょう。
■ グレード(3種類)
1.DX
ハイエースバンの標準グレード。最低限の機能・装備で比較的コストが低く、主に商用車としてのニーズが多いグレードです。
2.スーパーGL
ハイエースバンの最上位グレード。装備・オプションが充実していて、乗用向けのグレードです。
3.DX/GLパッケージ
DXをベースに、インテリア(内装)、エクステリア(外装)をグレードアップしたものです。
■ ボディサイズ
1.ボディ長さ(2種類)
・ロングバン : 4695mm
・スーパーロングバン : 5380mm
2.ボディ幅(2種類)
・標準 : 1695mm
・ワイド : 1880mm
3.ボディ高さ(3種類)
・標準 : 1980mm
・ミドルルーフ : 2105mm
・ハイルーフ : 2285mm
■ エンジン(3種類)
・1TR (2.0L ガソリンエンジン)
・2TR (2.7L ガソリンエンジン)
・1GD (2.8L ディーゼルターボエンジン)
■ 駆動方式(2種類)
・2WD(2輪駆動)
4WDと比較して燃費が良いため、舗装路の走行であれば2WDがおすすめです。
・4WD(4輪駆動)
山道や悪路、未舗装路の走行に向いています。
■ ドア数(2種類)
・4ドア : 片側スライドドア
・5ドア : 両側スライドドア
■ 乗車定員(4種類)
・2/5人乗り ・3人乗り ・3/6人乗り ・3/6/9人乗り
どうでしょう、ハイエースバンのバリエーションの多さがお分かり頂けたのではないでしょうか?
実際には、この中で組み合わせが決まっており、用途に合ったグレードを選択します。
ぜひ、自分好みのハイエースをみつけてください。
ハイエース200系のマイナーチェンジによる変更点
ハイエース200系は16年という長い歴史の中で、幾度ものマイナーチェンジを経て洗練された車へと進化しました。
具体的には、デビューから5度のマイナーチェンジを行い、改良毎のモデルを、「1型・2型・3型・4型・5型・6型」と呼んでいます。
では、順を追って、マイナーチェンジによる主な変更点を振り返ってみましょう。
■ ハイエース200系デビュー 初代1型 (2004年8月~2007年8月)
4代目ハイエース発表から15年。待望のフルモデルチェンジ。4代目ハイエースまでは100系と呼ばれています。
4ナンバー(小型貨物自動車)枠でクラストップレベルの3メートルという荷室空間を確保。ハイスペックな安全性・環境性能、先進的でスタイリッシュなデザインが話題を呼びました。
■ 2型(2007年8月~2010年7月)
・排ガス規制等の時代の変化に対応し、DPR(排出ガス浄化装置)を採用。
・2KD(2.5L ディーゼルターボエンジン)から1KD(3.0L ディーゼルターボエンジン)へと変更。
・スーパーGLにワイドボディが追加設定。
・DX/GLパッケージが追加設定。
環境性能が大幅に改善された2型ですが、この頃の初期のDPRは不具合が多く、ユーザーやディーラーは対応に苦労しました。
■ 3型(2010年7月~2013年11月)
・2型でトラブルの多かったDPRや1KDエンジンの改良により、環境性能が大幅に改善されました。
・外観で、フロントバンパー、フロントグリルの変更により、よりスタイリッシュになりました。
・ディスチャージヘッドランプがオプション設定されたことにより、夜間の視認性が大幅にアップしました。
・オートエアコンがオプション設定。
やはり3型においては、2型でトラブルの多かったDPRや1KDエンジンの改良が特に良かったと思います。
中古車購入をご検討の方には、個人的に3型以降をおすすめします。
■ 4型(2013年11月~2017年11月)
・全車LEDヘッドランプの採用。より明るく、省電力になりました。
・フロントグリル(スピンドルグリル)の採用。フロントバンパーの変更。
・リヤコンビネーションランプの形状変更。
・リヤサイドガラスの形状変更。
・アンテナがリヤクウォーターガラスへ移動し、フィルムアンテナへ変更。
・プッシュスタートスイッチの採用。
・オートスライドドアがオプション設定。
4型では、デザイン的な改良が特に目立っているように感じました。
よりパワフルな印象になったように感じます。
■ 5型(2017年11月~2020年3月
・TSS-P(トヨタセーフティーセンスー上位グレード)搭載。
・1GD(2.8L ディーゼルターボエンジン)の採用。
・ディーゼルエンジン車への6速ATの採用。
5型になり、走行性能・環境性能・安全性能が大幅改善です。
■ 6型(2020年4月~現在)
・ICS(インテリジェントクリアランスソナー)の採用。フロント・リヤバンパーに搭載されたセンサーで障害物を感知し、踏み間違いなどによる衝突被害を軽減します。
・パノラミックビューモニターの採用。駐車場や交差点で周囲の安全をサポートします。
・デジタルインナーミラーの採用。荷物をたくさん積んでいても後方の確認が可能になりました。
・メーターデザインの変更。よりスタイリッシュになりました。
・サイドミラーの形状変更。丸みを帯びた形状からスクエア型のデザインになりました。
6型で時代に合わせて、安全性能がさらに強化されました。
こうして見てみると、時代の変化に合わせて、かなりの改良を重ねてきたのがお分かり頂けたのではないでしょうか。
これからのハイエースの進化が楽しみです。
まとめ
以上、ハイエースバン200系について網羅的に解説させていただきました。トヨタを代表する車と言えます。そしてアフリカなどの新興国マーケットで圧倒的な支持率を誇る車でもあるのです。
まだまだハイエースの魅力を語り尽くせませんが、これからもハイエースに関することをまとめて記事にしていきたいと思います。